『シンゴの旅ゆけば~!(142)俺はケネディを撃った真犯人を知っている2』
当時は、まだヨーロッパ共通のユーロというお金が導入される前だったから、イタリアはリラ、フランスはフラン、モナコもフランだったかな。
クレジットカードも、どうしてもお金がなくなったら使うためと、ちょっといいホテルに泊まると、デポジットとしてクレジットカード番号を控えさせてくれと言われることがあるので、1枚だけ持っていた。
でも、旅のお金のほとんどはトラベラーズ・チェックを使っていたのね。
知らない人もいるだろうから、説明すると…トラベラーズ・チェックというのは金券のようなもので、俺はいつも1万円と書かれた日本円建てのチェックを使っていたのだけど、それを持って銀行とか両替所に行くと現地のお金に換えてくれる。
チェックにはサインを書き込む欄が2つあって、日本の空港なんかでチェックを買うと、まずは漢字で(漢字って、ヨーロッパ人には偽造できないからね。)名前を1箇所だけ書き込む。
現地の銀行か両替所でもう1回漢字のサインを書いて、係の人が、この2つのサインは確かに同じだと認めてくれるとお金に換えてくれる。
そういうシステムになっているのよ。
ところが、パリだったと思うけど、あのな日本の兄ちゃん、俺にはこの訳のわからないサインが同じかどうか判断できない。
ちょっと待てよと言われたことがある。20分くらいかかったけど、スタッフが何人も出てきて、いや、これは同じものだとか、いや、違うだろうとか議論をすることになったことがある。
最後はちゃんと両替してくれたけどね。
モナコから出る夜行電車はポルトガルのリスボン行きなのだけど、俺がイタリアからモナコに着いたのが夕方6時くらいで、ポケットにあったのは残ったリラ(当時のイタリアの通貨ね)だけだった。
じゃあ、どうせまたフランスに戻ってくるし、1万円をフランに交換して何か食べようと思ったのだけど、駅の両替所は閉まっている。
駅員さんに、ねぇ両替できる場所あるかなって訊いたら、冬場は(この時は11月後半だったと思う。)もうやってないなぁと言われた。
さっさとスーパーが空いているうちにクレジットカードで何か買えばよかったのだけど、アホな俺はそのことに気づかなかったのね。
両替することしか頭に中になかったのだ。