ヨーロッパを安く旅しようと思ったら、おそらくバスということになるのだけど、俺は移動の時間にだらだらと本を読みたいタイプなので、いつも電車に乗っていた。
バスだと読書していると酔うのよね。
ヨーロッパにはユーレイルパスという乗り放題のチケットがあるのだけど、日本でそのチケットを買っていって(現地では買えないのよ)ちょっと変わった使い方をして、ホテル代をうかしたのね。
例えば、夕方にミラノにいたとする。中央駅に行って、その日のスケジュールを見て夜行電車を適当に選ぶ。
バルセロナ行きを選んだとして、その電車が19時発あたりで、翌日の7時あたりにバルセロナに着くということになると丁度いいのよ。
近所のスーパーで安い惣菜とかパン、ビールを買って電車に乗り込み、本を読みながら食事をする。
翌朝にバルセロナに着いたら、だいたいの大きな駅にはシャワーがあるから、身体をきれいにして服を着替える。
そういう感じで、脈絡なくフランスからドイツとか、ベルギーからポーランドとか、ホテル代わりに電車を使っていたわけだ。
たまにドイツあたりで日本式の座席が独立したような車両もあったけど、当時の電車はだいたい6人用のコンパーメントで、要は6人で使う部屋があるということなのね。
座席をグッと引き出すとコンパーメント全部をフラットなベッドのように使うこともできるので、暇な電車で俺一人しかコンパーメントにいないとか、他のバックパッカーが乗っていて、大きなベッドにして寝袋で寝ようぜと話がまとまると、即席ベッドを作って、ぐっすり眠ることができた。
だいたい無計画な旅だし、記録もメモしたりしていないのだけど、なんだかパリの北駅には何度も来ているなぁとか、ローマのテルミニ駅は4度目じゃないかということになるから(ハブになっている大きな駅には必然的によく来ることになる)旅程を残しておいたら面白かっただろうなと思うけどね。
そうそう、そういう旅をしていると訳のわからないことが起こることがあるのよね。
あれは確か、モナコから深夜12時くらいに出発する電車に乗った時のことだ。