『10000時間仮説①』

ニューヨークからハドソン川を北へ進んだところに、ウエスト・ポイント陸軍士官学校があります。

入学するのがかなり難しいことで有名で、テストの成績だけではなく、中高時代の成績はもちろん、ボランティア活動やクラブ活動まで評価の対象になるそうです。

そのうえ推薦状が必要で、推薦者として相応しいのは、副州知事以上の政治的な地位を持つ者が望ましい…そうですから、まずは推薦状を書いてもらうだけで大変でしょうね。

ところがですね。

それだけの難関をくぐり抜けて入学した生徒たちなのですけど、4年間で卒業できるのは75パーセントです。

25パーセントの生徒は退学処分、または自主退学を選ぶそうなのです。士官学校ですから、それはまぁハードな日常なのは想像がつきますけどね。

運営している側としては、卒業できる生徒の割合を上げたいわけです。

それであれば、そもそも入学時に校風であるとか、カリキュラムについてこれない、あるいは問題を起こしそうな生徒をふるいにかければいい。

そう考えて、卒業できる生徒の条件を探る試みが始まったのですけど…これがわからないのですね。

60年間、心理学者や社会学者、脳科学者といったメンバーが調査をするのですけど、答えは見つからなかったのです。

その難問を解いたのが、ペンシルバニア大学で心理学部教授をされているアンジェラ・リー・ダックワースなのです。

彼女が発見したのは「やり抜く力」(造語なのですけど、GRITと呼ばれています)を持っている者は、士官学校卒業まで頑張ることができるということ。それはそうだろうと言われそうですけど、彼女のすごいところは、簡単なテストで、その人の「やり抜く力」を判定できるようにしたことなのですね。

ダックワース教授は言います。

ある人物の将来の成功を予測する要因としては「才能」よりも「GRIT」の方が優れている。つまり、才能があるかどうかよりも、GRITがあるかどうかの方が成功するかどうかに影響を与える。

GRITは、Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の頭文字をとった言葉なのですけど、この能力を持っているかどうかは、人生そのものに大きな影響を与えるようなのです。

検索すれば、「やり抜く力」テストが見つかりますから、試してみると面白いですよ。