『シンゴの旅ゆけば~!(131)ロサンジェルスのフッカー・ホテル④』

タイでチェンマイからずっと北上していくと、チェンラーイからミャンマーに入ることができるのだけど、そこからはタチレクという町に入れるだけで、ヤンゴンとか他の地域には行けないようになっている。そもそもタチレク・ヤンゴン間は、交通機関がないそうだった。

確かタイの通貨(バーツ)もそのまま使えたはずだ。

タチレクというのは、売春の町として有名で、それもペドフィリア連中のための売春の町だったのよね。国境を越えると、客引きがウヨウヨいるのだけど、あれだけはダメだと思うのよ。なんだか雰囲気が気持ち悪いので、5分でタイに引き返した記憶がある。違法なものは何でもある町だったけどね。だいたいアヘンで有名なゴールデン・トライアングルの中にある訳だし。

ロサンジェルスのホテルの姉さんたちは、大人なのだけど、きっといろいろと事情があるのだろうと思うのよ。そうじゃなきゃポピコンのホテルでこき使われながら、道に立ったりはしないだろうしね。

ホテルに早めに戻ってきた時に、トイレが詰まったと騒ぎが持ち上がっていて、仕事の準備を整えた姉さんたちがトイレでキュッポン、キュッポンとやっていた。英語じゃあの道具のことをPlungerと言うそうだ。赤いエナメルのハイヒールを履いた姉さんたちが、トイレで悪戦苦闘をしているのは現実のように見えなかった。手伝うことにしたのだけど、まったく俺は何をやっているのだ。

そうそう、興味がある方のために書いておくと…世界中の娼館やフッカーを知り尽くしているような旅人に、じゃあ世界で一番いい女の国はどこだよと尋ねると、全員同じことを答えるのよ。

どこだと思います?

答えは…ハンガリーなのね。白人だけど小柄で可愛らしく、情が深いそうです。まぁ、どうでもいい話ではあるけれど。

サンセット大通りのそばのホテルで、顔馴染みになるにつれ愛想がよくなってきた姉さんたちのコーヒーを飲みながらパンを食べ、古着の買い付けに出かけて、夜はポピコンとビールを飲みながらポップ・コーンを食べる。そうやってダラダラと時間は過ぎていった。

ホテルの近所には高校があって、よく体育館の裏で高校生の女の子が話しこんでいるのを見かけたのだけど…とにかく身体が大きいのよね。化粧をしている子もいるから、10代の女の子が話しているのだろうけど、3人くらい子供のいるお母さんが家事の悩みとか、子育ての悩みを打ち明けあっているようにしか見えないのよ。

身体から何というのか、強い圧が出ている気がする。アメリカ人って当時の俺にはそう感じられたのよね。