『名前の由来③』

スペインで中庭を意味していたパティオという言葉は、いろいろな国で別の意味に(とはいっても、リラックスできる場所という、もともとのパティオ性は失われいませんけど)変化していきます。

オーストラリアやインドでは、バルコニーやベランダをパティオと呼ぶそうですし、フィンランドではパブやレストランの屋外飲食スペースをパティオと呼ぶそうです。日本だったらテラス席というところをパティオと呼ぶのですね。

日本の建築におけるパティオは、やはり中庭としてくつろげる空間ということになるのですけど、ちょっと調べてみると、プライベートを保てるというのも要素の中に入っているみたいです。ベランダというのは通りから見えてしまうけれど、パティオは見えない。そういうことですね。

でもパティオ十番って丸見えだよね…そう思っていたら、違うのです。カウンセリングルームから見下ろすと、6本のケヤキの樹木が空間を囲んでいる。そういうことなのねと思ったのですけど…通りから見える、見えないに関わらず、このパティオは麻布十番という町全体のパティオなのだと思うのです。

たぶん、ここは麻布十番の中心だなとも思ったのですね。

どんな町にも中心があると思うのです。ヨーロッパの町はだいたい教会を中心としているところが多くて、教会の前には市が立ちます。だから教会前の通りは英語ならマーケットストリートとか、ドイツ語ならマルクト通りとか呼ばれているのですね。

うちのサロンって町の中心にある。そう思うとなんだか嬉しくなってきたのですけど、先日はパティオ十番で盆栽市が開催されていて、ますます町の中心めいてきたなぁと、カウンセリングルームでしみじみと、いい場所に引っ越したものだと喜んでいたのです。

何を言っているのだ…とか言われてしまいそうですけど。

それに、この麻布十番という町は…何というか、しっくりくる町なのです。古いものと新しいものが併存していて、日本的なものと外国からやってきた文化も共存していて、どこに似ているかと言われたら…映画の『アメリ』とか『地下鉄のザジ』に出てくるようなパリかもしれない。ダウンタウンとまではいかないけれど、かといって都市という感じでもない。

私にとっても、いい塩梅な町なのです