『シャルル・ペパンとバカロレア①』

ファッションであるとか、建築であるとか、もちろん文化もそうだし、食事も…そう考えるとフランスという国に行きたくなる理由は山ほどあって、オードリー・ヘップバーンが言ったらしい「Paris is always a good idea」ということになるのですけどね。

ただ、なかなか遠い場所ではあるので、おいそれと週末に出かけられる距離ではないんですよね。
ニューヨーク・パリ間も7時間くらいはかかるので、仕事でしょっちゅう行く必要があった時期は機内でとにかく寝ていました。

それはまぁどこの国にだって国民性というか、他の国との差異はあるとは思うのですけど、フランスという国は何かが違う。他のヨーロッパの国とも違うし、もちろんアメリカとも違う。

先日70年代にパリに留学されていた女性とそういう話をしていて、彼女が興味深いことを話してくれました。

例えばね。政治について、経済について、まぁ一般的に日本では女性があまり興味を持たないようなトピックではあるけれど、フランス女性はそういう話題にもちゃんと自分の意見を持っている。
問われれば、きちんと答えられる。

ああ、なるほどなぁと思ったのですけど、それを聞いていて、過去に聞いた話を思い出していたのです。

私の友人の話です。

行きつけのブティックがマレ地区にあって、久しぶりに訪れたら外国人観光客でごった返していたそうなのですけど、店内を覗くとマダムと目があって、彼女はやれやれといった表情をしている。

それでしばらくヴォージュ広場のカフェで時間をつぶして戻ってくると、マダムは散らかった商品を丁寧にたたみ直していたそうです。

そもそもフランスでは許可を得ずに商品に触らないのがルールですから、本来ならこういう状況にはならないのです。

ああいう観光客の人たちはね。マダムは言ったそうです。

本当にかわいそうだと思う。あの人たちには教育がない。

ではフランス人に教育があるのか…と言えば、それは分からないですけどね。

少なくとも社会で生きていくためのディシプリンを学ばせようという意図は教育する側には明確にある。

ナポレオン・ボナパルトが制定したというバカロレア(高等学校教育の修了を認定する国家試験)もその一つだと思うのです。