渋谷中央図書館は原宿の東郷神社のそばにあるのですけど、予約していた本を受け取って、ユナイテッド・アローズのバーに寄るというのが、最近の定番になっています。明治通りから一本入った古着屋さんが立ち並ぶ道を通るのですけど…ちょっと驚いたことがあったのですね。
ソニック・ユースのTシャツが店頭に飾られていて、ジェーン・バーキンがプリントされている。そういうTシャツがあることは知っていたのですけど…なんと7万円だそうです。
まぁ、それはともかくジェーン・バーキンが亡くなって1年が経つのですけど、雑誌で特集が組まれるとか、彼女の映画が特集上映されるとか、さまざまな形で追悼がされてきました。特別ファンという訳でもなかったのですけど、ここ1年の間に何度も彼女の姿を目にするたびに、不思議な女性だなという感慨のようなものが大きくなっていったのです。
たまたま時間があったから…くらいの理由だったのですけど、先日アニエス・ヴァルダが撮ったジェーン・バーキン映画を2本まとめて見て(『カンフー・マスター!』と『アニエスv.によるジェーンb.』)ますますジェーン・バーキンの魅力というのは謎だなぁと考え込んでしまったのですね。
こんなことを言うと怒られてしまいそうですけど、確かに美人ではあるけれど、美人女優とか、美人歌手なんていう言い方で語られるようなタイプでもないし、フランス的なニュアンスがあると言えばそうでしょうけど、そもそも彼女はイギリス人ですしね。取り立てて演技がうまいというタイプでもないでしょうし、歌唱力で聞かせるタイプでもない。
じゃあ、いったい何がそんなに彼女を魅力的に見せるのかと言ったら、これはもうジェーン・バーキンという一つのジャンルを確立してしまったように思ったのです。ジェーン・バーキン以外にそのジャンルには誰も含まれない。娘のシャルロット・ゲンズブールも、ルー・ドワイヨンも含まれない。
そういうありようというのは、もうそれだけで魅力的なのかもしれない。唯一無二ということですから。
UAバーでワインを飲みながら、ジェーン・バーキンのことを考えていたのですけど…確かに私もジェーン・バーキン風に服を着ていたりしますからね。ちょっと小さめのTシャツにジーンズということですけど。そういえばカゴバッグも夏にはよく持っているし、コンバースのスニーカーも履いていますね。
ファッション、それから生き方というのもそうかもしれませんけれど、ジェーン・バーキン以前、ジェーン・バーキン以降という区分が、この世界(特に女性に対してですね)にはあるのかもしれない。
そう思うのです。